大きな人北村 資暁
人と人が集まって組織を作って「大きな人」となり、一人では出来ないことをする。
大勢の良識ある人々が集まっているはずですから、世間から一定の期待が寄せられています。しかし実際にはそれだけではなく、たくさんの個性が一同に
会することにもなるわけですから、彼の行動というのはそれらやそれらに起因する諸事情に否応なく左右されてしまいます。そして行動は評価され、評価は彼の運命を決定づけるのです。
理想的なのは、それぞれの個性を最大限に生かすのと人々の期待に応えて目標を達成することを両立させていくことですが、しかし現実的にはそううまくいくものではないのはご存じのとおり。個性の意味を履き違え、”自己犠牲”あるいは”奉仕”の精神とかけ離れた意見ばかりがまかり通るようになったら、かつては全員共通の目的だったものも哀れな骸と化していくのは火を見るより明らかです。そのまま手を拱きよたよたと歩み続け、やがていろいろな不都合が生じてきても対処できず、その振幅が徐々に大きくなり、最終的に立ち行かなくなる大きな人のなんと多いことでしょう。目標を見失った彼は、自身の存在理由の不確かさがさらに自分自身を蝕んでいくことにはなかなか気づくことができません。そんな時、小さな人々はどのように振る舞うべきでしょう。
ある人々は、ともかくみんなに合わせて成行きに任せるある人々は あくまで理想を追及する。
困難なこととは知りつつも、後者の道を選ぶ人々は必ずいるものです。彼らは自己の利益より全員のそれを優先させながら正々堂々と力強く歩み続け、失われた当初の目標を再び取り戻すべく奮闘していくことでしょう。
大きな人は何のためにいるのか?
そう簡単には答えも、良い結果もでるはずはありません。しかし、そのように努力し続ける人々は、他人を尊重し、自分の事を一番おしまいに考えることによってかえってその評価を高め、やがて自分自身が大きな人になっていくのです。